注射のワクチンの副作用について

ワクチンの接種には副反応が伴います。注射による痛みも副反応のひとつです。ただし、針の痛みは短時間かつ一過性であり、とくに問題になることはありません。しかし、発熱や腫れ、稀ですが重篤な副作用については心配される方も多いと思います。

発熱

発熱は、ワクチン副反応で最も有名な副反応だと思います。実際に、生後2か月から接種するワクチンでは、10人に一人以上は微熱や38℃以上の発熱を経験します。

Q:どういったときに受診をしたほうがいいですか?
A:通常のワクチンによる発熱であれば、接種当日から翌日にかけて発熱しますが、接種翌日中には解熱します。この間、従来通りに哺乳や食事、活動ができて、ほかの症状などなく、元気があれば受診する必要はありません。逆に、発熱以外に心配になる症状があったり、ぐったりして元気がないなどの場合はなるべく早期の受診を考えてください。とくに、哺乳が全くできないほどにぐったりしている場合は夜間でも早急に受診することを考えてください。また、元気でも、発熱が2日以上(接種翌々日以降まで)続く場合も受診を考えてください(ワクチンによる発熱以外の可能性を考えます)。

Q:解熱剤は使ったほうがいいですか?
A:ワクチンによる発熱に対して解熱剤を使う必要はありません。発熱によって辛そうであれば使っても悪くはありませんが、基本的には使うことで得られるメリットはほとんどないと考えてください。

接種部位の異常

Q:接種部位が赤くなっています。大丈夫でしょうか?
A:接種当日から数日にかけて、接種部位が赤く、時にはやや熱感をもって腫れることがあります。赤ちゃんが元気そうであれば基本的に全く問題ありません。接種部位を触るだけで泣いてぐったりしているなど、異常な腫れ方の場合は受診させてあげてください。

Q:接種部位に「しこり」ができてしまいました。受診したほうがいいですか?
A:ワクチンの接種部位に後日しこりができることがあります。数㎝以内のしこりについては遅くとも数か月以内には治まりますので基本的に様子をみてかまいません。

重篤な副反応について

Q:ワクチン接種後の死亡例はどれくらいありますか?
A:日本人小児の統計では、小児用肺炎球菌ワクチンの場合、267万接種のうち死亡例は4例で、10万接種あたりの死亡頻度は0.2という報告があります。ヒブワクチン(現在は5種混合ワクチンの中に入っています)については、451万接種のうち死亡例は7例で、こちらも10万接種あたり0.2という数字があります。ただし、これらはワクチン接種後に死亡した例すべてを含んでおり、ワクチンが直接原因となっている例はさらに少ないと考えらています。
 ワクチンとは無関係に、赤ちゃん全体の死亡率について、2022年9月に発表された人口動態統計によると、2021年における乳児死亡率は1.7(対1000人比)です。これはつまり、日本で生まれた赤ちゃんについて、10万人あたり170人が何らかの原因(病気や事故など)で亡くなっているということです。ワクチンはほぼすべての赤ちゃんが接種していることを考えると、ワクチンの10万接種あたり0.2という数字は10万人あたり170人の死亡数と比べても極めて低いことが分かります。

Q:リスク評価はどのようになっていますか?
A:ワクチンの効果とリスクの相互評価も重要と思われますので、肺炎球菌ワクチンについて例を示します。小児の肺炎球菌による侵襲性肺炎球菌感染症(本来は菌が存在しないはずの血液、髄液などから菌が検出される感染症)の発生率は、肺炎球菌ワクチンの定期接種等が実施される以前の2008~2010年は10万人あたり約25人でしたが、2022年の発表では10万人あたり4.8人に減少しています。侵襲性肺炎球菌感染症のひとつである髄膜炎をきたした場合には、こどもでは2%が死亡、10%に難聴、精神発達遅滞、四肢麻痺、てんかん発作などの後遺症を残します。以上のことから、リスクと効果の観点からも接種は十分に妥当と評価されています。